光の分類
太陽から届く光はその波長(*1)が長い方から順に、赤外線、可視光線、紫外線に分類されます。我々が見ることのできる光は波長が400から700ナノメートルの波長で、波長が長い方から順番に、赤、橙、黄色、緑、青、紫に見えます。
赤外線(700ナノメートルから1マイクロメートル程度)というのは赤よりも波長が長い光、紫外線(1ナノメートルから400ナノメートル、中でも一般的には100ナノメートルから400ナノメートルの波)とは紫よりも波長が短い光のことで、我々の眼では見ることはできません(*2)。
UVとは?
UVとはとはUltravioletの略、つまり紫より短い光である紫外線領域の光のことです。UVはその波長から更に、UV-A(315〜380ナノメートル), UV-B(280〜315ナノメートル), UV-C(100〜280ナノメートル)に分類されています。UV-Cは地表に到達する前に、大気、オゾン層などでほとんどが吸収されてしまい地表には届きません。UV-Bはその多くは吸収されてしまいますが、一部は地表に届きます。UV-Aは可視光線のように、その多くが地表に届きます。UVAはその波長が可視光線(目に見える光)に近いことからわかるように、肌などへのダメージは軽微なのですが、到達する量が多く紫外線の約9割を占めるため、次第に蓄積して肌にダメージを与えていきます。
News-Medical.NetによるUVによるDNA障害の説明(英語)
UVダメージのメカニズム
UV-A:
UV-Aは透過力が高くほとんどが表皮を通過してしまうのですが、UV-Bと違い細胞のDNAに直接吸収されないので、肌の細胞に対する直接のダメージは少なくてすみます。しかし、NAD、リボフラビン、トリプトファン、葉酸、ポルフィリンおよびソラレンなどの内因性または外因性の光増感剤と呼ばれる物質の光活性化を介して活性酸素種・フリーラジカルを生成します。
具体的には、光増感剤はUV-Aを吸収することで紫外線のエネルギーを受け取ります。その後、上昇したエネルギーを不対電子という形で移動することでフリーラジカルを生成します。このフリーラジカルがDNAの酸化損傷を誘導したり、真皮のコラーゲンなどを傷害し退縮させてしまうので、光老化とよばれる肌の老化、肌のシワなどの原因になります。
UV-B:
UV-Bは透過性が低く表皮の角層、または角化細胞までしか届かないのですが、UV-Aよりも直接的に細胞を傷害し、深刻なダメージを起こします。UV-Bは細胞のDNAに吸収され、核酸同士の結合を直接傷害(ピリミジンダイマー生成)するため、DNAの複製・転写を障害します。傷害されたDNAは自然に修復されますが、その修復過程でミスが起こると悪性腫瘍の原因となってしまいます。また、このようなUV障害から皮膚を守ろうとして、メラノサイトと呼ばれる皮膚の細胞からメラニンと呼ばれる色素を産生します。メラニンは黒色であるため、UV-Bを吸収し皮膚を障害から守る働きがあります。これが日焼けによるシミの原因となります。
酸素ナノバブルによるUVダメージ軽減効果
大気中のオゾンが紫外線を吸収していることは知られていますが、大気中の酸素も紫外線を吸収していることは案外知られてないようです。太陽から届く紫外線のうちUV-Cなどの波長の短い波は大気中の酸素と反応してオゾンを生成します。このオゾンは波長の長いUV-BやUV-Aのエネルギーを使って酸素に還元されることで紫外線を遮っています。このようなメカニズムで、太陽から届く紫外線の多くは、大気圏に存在する酸素やオゾンにより吸収・ブロックされているのです。つまり、大気中の酸素は地表を防護壁で取り囲んで守ってくれているのです。
これまでの研究ですでに酸素ナノバブルがフリーラジカル生成を抑制に関与することが示唆されています。さらに、大気中の酸素がUVを吸収し阻害できることは分かっているので、酸素ナノバブルを投与することで、細胞や組織を大気圏の酸素のような防御壁で取り囲み、UV-AやUV-Bのエネルギーが光増感物質やDNAに届く前に、UVエネルギーを吸収することができないかという研究が行われています。
このような最新理論に基づいた研究(*3)では、酸素ナノバブルの投与によって細胞が、あたかも防御壁に取り囲まれたような状態になり、直接致死性のUVを照射しても細胞がダメージを受けにくいということが示されています。
上のグラフは、細胞をUVで刺激した際の細胞障害の程度を、ミトコンドリア機能から測定した様子を示しています(MTTアッセイ)。
細胞に強いUV照射を行うと、前述したような機序で細胞のDNAが直接障害を受け、死滅します。しかし赤い矢印で示されているように、酸素ナノバブル投与(UV +O2)により、細胞・DNAに防御壁が作られ、UV障害の程度が著しく改善しているのがわかります。
残念ながら現時点(2021年3月)では未発表のデータであるため、現段階ではこれ以上の詳細なメカニズムに関しては公表できないということでした。
今後この研究が進み、酸素ナノバブルのUV障害に対する効果が更に証明されていくことが期待されています。当機構でも、引き続きこの研究の結果を報告していきたいと思います。
*1 光は、粒子でありかつ波であるという二重の性質を持ちます。光の波であるという性質に注目すると、光は電磁波として捉えることができて、光をその波長(波の長さ)で分類することができます。その名の通り、電磁波は電場と磁場という直行する2つの波からなり、その波が一周期振動するときに進む距離のことを波長といいます。
ちなみに、光は真空中で一秒間に約30万キロメートル(300×10の15乗ナノメートル)進みます。一秒間の周波数(Hz)が1000テラヘルツ(1×10の15乗Hz)の波は約300ナノメートルの紫外線ということになります。
*2 赤外線より波長が長い波は、マイクロ波、さらに長くなると電波と呼ばれる波になります。ちなみに携帯電話などで使われているのは、2Ghz(2×10の9乗Hz)ぐらいなので、波長は約15cmと紫外線に比べるとかなり長い波になります。一方、紫外線より波長が短いと、X線やガンマ線といった領域が有ります。これはピコメートルレベルの波長になり、医療での画像撮影や治療に使われています。
*3 未公表データ:提供元:Nano Bubble Research Laboratory, UW Madison, SMPH